07.21
視察報告(横浜市・森町・八戸市)
こんにちは。西郷宗範です。
すっかり遅くなってしまいましたが、先週会派視察に行ってきました。
帰ってから会派移籍の課題が持ち上がり、すっかりこの時期になってしまいました。
まさか市政同友会として最後の視察になってしまうとは…
いずれにしろ、今回の視察は私としても興味深い内容が多く、会派は変わっても役立てていきたいと思います。
さて、今回視察したのは横浜市の「ごみ屋敷」対策について、北海道森町の「働き方改革」について、南郷アートプロジェクトと山の楽校についてです。
まず、横浜市の「ごみ屋敷」対策についてです。
横須賀市においても現在「ごみ屋敷対策検討協議会」を設けて、ごみ屋敷対策に係る条例等の検討を行っているところですが、先進事例として横浜市の対策について視察を行いました。
横浜市では昨年平成28年12月に「横浜市建築物等における不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための支援及び措置に関する条例(いわゆる「ごみ屋敷」対策条例)」を施行しました。
ごみ屋敷のには明確な定義は存在しません。
しかし、近年、高齢化・核家族化・地域の人間関係の希薄化などを背景に、自宅やその敷地に大量のごみをため込む、いわゆる「ごみ屋敷」が各地で問題となっています。
ごみ屋敷になるケースとしては、本人がごみではない(財産)と思っているケースや本人は何とかしたいと思っているケース、空き家状態の家にゴミがたまっているケースなど様々なタイプがあります。
横浜市では、ごみ屋敷の根本的な解決にはごみを撤去するだけではなく、当事者に寄り添い、福祉的な支援を通じて、背景にある課題を解決することが必要と考えており、また、未然防止や再発防止も重要であると考えています。
そこで、中核となる担当部署を健康福祉局におき、資源循環局と区役所一体となった体制を置いています。
実際には、健康福祉局福祉健康化を窓口に決めるうえでは対策検討プロジェクト内でも様々な議論があり、決定まで半年を費やしたそうです。
そのほかについては意外と順調に進んだようで、パブリックコメントでも76人から179件の意見はあったものの、条例を制定して対策を進める事には意見はなかったそうです。
横浜市の条例の特徴は、ごみ屋敷発生の背景には、地域生活における孤立等の生活上の諸課題があり得ることを踏まえ、福祉的観点から当事者に寄り添った支援を行うことに力を入れています。
そこで、「未然防止」、「解消」、「再発防止」のための福祉的な支援を規定しています。
また、近隣に影響がある場合には、各区の収集事務所が中心となって「排出の支援」を行うこともできます。
これまで私も3軒ほどのごみ屋敷の課題に直面してきましたが、その中の一つにもあったのが、本人が表まで出してくれなければ、市職員などが立ち入ってごみを搬出できないという事例です。
この点については横浜市では、同意を得れば職員が家の中まで入って、搬出の支援を行えるというようになっているのです。
また、市政同友会の会派要望でも行ってきましたが、セルフネグレクトに起因する「ごみ屋敷」については、本人の支援要望が無ければ対応が難しいのが現状です。
これについても、横浜市では健康福祉局として専門職員を配置して、こうした問題に起因するごみ屋敷にも、当事者に寄り添った支援を基本とし、ごみの片づけだけでなく、問題の根本的解決を目指し、福祉的視点を重視して、罰則や公表などを規定は設けていません。
そうした表れは、長々と書かれた条例の名称にも表れているところです。
条例制定から半年余りがたち、現在抱える課題は再発防止のための診断をお願いする医師の確保とのことでした。
まだまだ横須賀市においても検討中ではありますが、横浜市の事例を参考により良い条例制定に向けて検討してきたいところです。
続いて、森町の働き方改革についてです。
通常、行政の内のネットワーク構築はオンプレミス型(サーバーなどの機器を自庁舎内に置く)のが主流です。これはセキュリティの担保や回線依存による通信断時におこる業務の停止を避けるためです。
しかし、森町ではoffice365を使用したパブリッククラウド(外部のプロバイダーのシステムを利用する方式)を使用しています。
一見安全性は大丈夫なのかと心配してしまうところですが、現在のサイバー攻撃は身代金型などビジネスとしてのサイバー攻撃が増えており、行政のセキュリティの某弱性などをついてくるものが多くなっています。
セキュリティを強固にするには当然費用もかかり、場合によってはセキュリティのために本来市民などが受けるべきサービスの予算まで利用しなければならない事態に陥ることもあり、本末転倒となってしまいます。
しかし、パブリッククラウドは、こうした攻撃にさらされることを前提として作られており、その安全性はオンプレミス型のプライベートクラウドを利用するよりより安全です。
担当者が話した言葉で一番印象的だったのは「最新鋭の防御は持たないこと」でした。
クラウドでもオンプレミスでもネットワークを利用することには変わりはありません。
リスクの明確化のためすみわけが必要と考えたそうです。
それでも、情報の漏えいなどの心配は、行政としてはしっかりと行っていかなければいけないところもあり、森町ではオープンで問題ないような情報などインターネット側のみクラウド化し、総合行政ネットワーク(LGWAN)については別途プライベートクラウドを利用しているそうです。
今回の視察では、システム構築などについてはネットなどにも資料が掲載されているため、そちらを見てくださいということで、裏事情などの肝となる部分をお話しいただきました。
最終的な報告書ではどこまで書くかは検討しなければいけませんが、あまり書きすぎると本市を含む他自治体のシステムに問題が起きてしまう可能性もありそうなので、きょうのところはここまで…
さて、最後は八戸市の南郷アートプロジェクトについてです。
南郷アートプロジェクトは、民俗芸能や自然など豊富な地域資源を秘める八戸市の南郷という地域を舞台に、アートが持つ新しい視点や創造的なアプローチを取り入れ、住んでいる人とともに、”身体がオドル、心がオドル、あなたとオドル”プロジェクトです。
ダンスやジャズを用いて、地域住民を巻き込み、様々な資源を活用したプロジェクトを実施することで、地域への誇りやアイデンティティの醸成を図り、地域の活力に繋げています。
南郷は昭和35年が人口のピークで平成22年には44%も人口が減少しました。
昭和45年には過疎地域の指定も受けているそうです。
そこで地域資源の活用として、えんぶりなどの民俗芸能をポピュラーに勝て行くためにアートプロジェクトを行いました。
もともと縄文土器などが出土されるような歴史のある地域であり、ジャズフェスティバルなども行っていて、「ジャズとそばの里」として発展してきていることから、この地区で行うことになったようです。
事業費の約4割は文化庁の文化・芸術による地域活性化国際発信事業費が交付されており、しっかりと財源を確保した事業となっています。
ジャズ発祥の横須賀としてはなぜジャズなのという疑問があったのでぶつけてみたところ、当時の市長がジャズが好きだったとカンタンな理由…
しかし、好きこそものの上手なれといわれるように、好きだからこそ熱心に取り組めるもので、ジャズが根付いていったのもそうした経緯があったからかも知れません。
こうした歴史が、今回のアートプロジェクトにも生きており、このアートが自分たちの作品だと思えるかというところに肝があるようです。
生き生きと暮らすことは自己肯定をそれぞれが持つということであり、上地新市長が目指すところにも通じる所がありそうです。
アートプロジェクトではコンテンポラリーダンスと神楽やジャズとの融合など市民も一体となって参加できるようになっています。
現在、横須賀でもジャズ協会などが主体となってまちなかジャズなどジャズを身近にする活動が行われていますが、ただ見せるだけではなく、参加できる形にすることでより身近なものになるのかもしれません。
もう一つの山の楽校は、廃校になった学校を活用して、ダムの底に沈んだ地域の暮らしや技を伝える展示が行われている場所で、また、地域の住民が作る運営協議会が八戸市から市世うtの指定管理者として指定を受け、炭焼きや藁細工・そば打ちなどを体験できるプログラムを行っている場所です。
また「楽校のそば屋」も事業の一つとして行っており、多くの方がここを訪れています。
今回は廃校利用ということで見学のみという形で施設を見てきましたが、今後横須賀市で人口減少による廃校などがおこった場合に、その学校をどのようにしていくかというのが課題です。
山村の学校とは同様にはできませんが、ここにも廃校利用のヒントや地域運営協議会の可能性など、今後参考になりそうなものが多くありました。
今回の視察は特に私の活動の中でも発想に行き詰っていたものを開かせてくれるものが多く、今後の活動に大きく影響してくれるような気がします。
詳細な報告は、後日、市議会ホームページに掲載される報告書でご確認ください。